あの夏の夜の続きは今夜
「誰」

玲美が低い声で言い放つ。

「あ、俺?俺、浮島周(うきしまあまね)って言います」
「え、ナンパ?」
「ナンパです、ナンパっていうか、お礼がてら話しかけてたっていうか」
「それをナンパって言うの」

身長170センチ近い玲美とこの男の目線はそんなに変わらなかった。

「なんなら」と彼は言う。

「すぐそこに友達いるんで一緒に遊びません?」

見ると3人ほどがビーチボールを目で追ってるのか、この浮島という男を追ってるのか、こっちを見ていた。

私は玲美の横顔に目をやる。

「別にいいけど」と玲美も私の方を見た。

私は声を出さずに玲美に「え?」という顔をする。玲美は小声で「別に良くない?」と返す。

待ってる輪の中の一人が大きく手を振ってきた。

「うちら行ってもいいんですか?」

玲美が浮島に最終確認する。

「全然。俺ら飢えてるんで」

彼はそう笑って私に振り向いた。

「彼氏いないの?」

わずかな間目が合った。

「いないけど」

本当のことを言うと、少し彼の右側の口角が上がった。


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