あの夏の夜の続きは今夜
浮島が選んだのは焼鳥屋だった。

「カウンターらしいけどいいよね?」

私にそう聞いて、私の答えを待たずにのれんをくぐる。

背が高い椅子に座って足元のかごにビジネスリュックを入れると、テーブルの上に置いてあったドリンクメニューを見て「日本酒いける?」と聞いてきた。

私はバッグをかごに入れて慌てて席に座りながら「ちょっとなら」と答える。

カウンター越しに店員に注文する。

すぐに冷やしトマトと日本酒とお猪口2つが目の前に置かれた。

キリッと冷えた日本酒が私の口の中で舌を焼くように漂う。

「酔いそう」

私が隣の浮島に言うと、「俺も」と言って笑った。

彼は笑うと急に人懐っこい表情になる。

表面を炙った鶏皮がわずかな脂と一緒に私の口の中で転がる。

「いとちゃん、彼氏いんの?」

ボリュームを抑えた声で聞いてきた。

「今はいない」
「いつまでいたの」
「4月に別れた」

ふーんと言って焼き鳥に手を伸ばす。

「じゃあこうして二人で飲んでても殴られる心配はないんだ」
「浮島は?」
「俺は連絡取らなくなった人がいる。そもそも付き合ってたのかも分からないけど」

すぐそこにいるのに触れられそうにない、掴めない人。

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