あの夏の夜の続きは今夜
「もう終電だ」と言った浮島と駅へ向かったのは12時半。
改札を急足で通り抜けて階段を駆け降りる。焦る私に「大丈夫大丈夫」とすぐ後ろで言う浮島。
同じように飲んだ後の人間が電車を待つホームに着いて、終電がまだであることを認識して、私はやっと胸を撫で下ろした。
余裕をもって電車がホームに到着する。
「浮島はどこなの」
「高円寺」
この電車は中野止まりで、高円寺までの終電はさっき出てしまっていた。
「どうすんの」
「中野で降りて歩いて帰るよ」
浮島は一緒に電車に乗り込んできた。
「ごめん」
「別に。近いし」
私たちは何か話すでもなく、ただ窓の外に視線を投げて過ごす。充満したお酒と汗の匂い。夏の、金曜日の夜の匂い。
あの日の潮の匂いはどんなだったか。
波の音はどんなだったか。
月は私たちをどう見下ろしていたか。
なんであの日の夜を、私はずっと手放そうとしないんだろう。