あの夏の夜の続きは今夜

打ち上げ花火よりも線香花火のような

土曜日、私は日中出歩いていたけど、午後中途半端な時間に家に帰ってきた。化粧は崩れないように、また直前に直せばいいし、やることもないんだけど。

足の爪にベージュのマニュキアを塗る。揮発性の香りがツンと鼻を突いた。親指の爪の表面がひんやりと冷たく濡れて、筆の先にぽったりと残った塗料を続けて人差し指、中指と小さな爪に乗せていく。

部屋の中はエアコンがよく効いて、風が当たるとすこし寒いくらい。

エアコンを止めればいいのに私はガーゼケットを肩にかけて、そして左足の指先に作業を移す。

後ろに束ねたかったのに長さが足りなかった一筋の髪の毛が目尻にかかる。指先で耳にかけて、時計を目にする。14時半。

こういう気持ちを「待ち遠しい」と表現するんだろうか。

やることもなくペールブルーのカーペットにクリーナーをかけると思いの外髪の毛が取れた。クリーナーの表面のテープをくるりと一枚剥がしてまた同じところをかけるとまた髪の毛が取れる。

一体どこから汚れが沸いているんだろう。

そんなことを考えながら飽きなかった。

洗面所を漂白剤で掃除し、お風呂場も漂白除菌。トイレを飽きるほど掃除して、玄関を掃いた。

ベッドの布団も丁寧に整えて、ラグを敷き直すと少し曲がっていたローテーブルもテレビに対して並行になるように置き直した。

一階のコンビニに行って飲み物とデザートを物色する。季節限定の低アルコールサワーも数本カゴに入れる。アイスもあるといいかもしれない。

そして何もすることがなくなってラグに座って映画の配信を流しながらクリーナーを飽きるまでコロコロする。

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