あの夏の夜の続きは今夜
花火大会会場の最寄駅に着くとものすごい人だった。電車を降りた時から階段までが遠い。
浮島のTシャツを見失わないように少しずつ前へ進む。
浮島は改札を出たところで私を待っててくれた。そこから歩調を合わせてくれた。
「人すごいね、見れんのかな」
浮島が独り言のように呟いた。大勢の人間が同じ方向へ流れるように歩いて行く。
「人混みも花火の醍醐味だよね」
私がそう言うと、浮島はチラッと私の方を振り返った。そして私の左手を簡単に取ると、人混みの方を向き直して立ち向かうように進んで行く。
浮島に引かれる手。優しいのに力強くて、こんな人混みでもはぐれそうにない。
電車の中で助けてくれた手だ。
「食い物買えるのかな」
浮島は少し背伸びして辺りを見回す。きっとその視点から見ても人の頭しか見えてないだろう。そのくらい道全体を人が埋めていた。
まだ花火が始まるまで50分ほどあるというのに。もしかしてここで見ることになるんだろうか。どこか、観れなくてもいいから座りたい。
浮島がわけもなく手をトントンとリズムつけて足にぶつける。
「場所変えようか」
きっと一本道を入ってしまうと建物が邪魔して花火は見えない。だけど浮島は人の流れを横切るように歩み始めた。
真横に手を引かれる。川を泳ぐように、向こう岸へ着くように、引力に逆らって歩く。
浮島の背中が隠れるけど手だけは繋がっている。
浮島のTシャツを見失わないように少しずつ前へ進む。
浮島は改札を出たところで私を待っててくれた。そこから歩調を合わせてくれた。
「人すごいね、見れんのかな」
浮島が独り言のように呟いた。大勢の人間が同じ方向へ流れるように歩いて行く。
「人混みも花火の醍醐味だよね」
私がそう言うと、浮島はチラッと私の方を振り返った。そして私の左手を簡単に取ると、人混みの方を向き直して立ち向かうように進んで行く。
浮島に引かれる手。優しいのに力強くて、こんな人混みでもはぐれそうにない。
電車の中で助けてくれた手だ。
「食い物買えるのかな」
浮島は少し背伸びして辺りを見回す。きっとその視点から見ても人の頭しか見えてないだろう。そのくらい道全体を人が埋めていた。
まだ花火が始まるまで50分ほどあるというのに。もしかしてここで見ることになるんだろうか。どこか、観れなくてもいいから座りたい。
浮島がわけもなく手をトントンとリズムつけて足にぶつける。
「場所変えようか」
きっと一本道を入ってしまうと建物が邪魔して花火は見えない。だけど浮島は人の流れを横切るように歩み始めた。
真横に手を引かれる。川を泳ぐように、向こう岸へ着くように、引力に逆らって歩く。
浮島の背中が隠れるけど手だけは繋がっている。