あの夏の夜の続きは今夜

夜の海だけが知っている

電話が掛かってきたのは夜10時。

私にではなく玲美にだった。

「え?今もう寝ようとしてた。いやそれはさすがに嘘だけど、いともいるよ。浮島もいるんでしょ?」

浮島ではない他の男からの電話のようだ。

「ええー、まじで?今から?スッピンなんだけど」

玲美が私に目配せをした。電話を片手で伏せて小声で言う。

「坂崎と浮島が今からこっち来るから会わない?だって」

ゲストハウスでシャワーも浴び終わった私たちはベッドの上で漫画を読んでいたところだった。

高校時代のジャージとTシャツ。

玲美がざっと身支度にかかる時間を計算した。

「10時半過ぎに来て」

電話越しに言う。

ああ、さっきメイク落としたばっかなのに。私は明日着る予定だった服をバッグから引っ張り出した。

ベースメイクはせずに眉尻と目尻にラインを描き足す。

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