あの夏の夜の続きは今夜
夜の海は初めてだった。
誰もいなくて、空に星と月だけが浮かんでいる。

海岸沿いの歩道から砂浜に降りて行こうとして、たくさんのビーチサンダルがつけていったのだろう湿った砂が残る階段に並んで腰掛けた。

お互いの腕がそっと当たる。肩を寄せ合うように互いに体重を預けた。

「明日帰るんでしょ?」
「うん、夕方からバイトだし」
「バイト何やってんの」
「コンビニのレジ」
「いいなー、俺も客になりてえ」

浮島の言葉を夜の真っ黒な海が飲み込むようだ。

浮島の手が私の腰に伸びる。

私たちは若かった。
若くて、まだ子どもで、目の前のことだけがすべてだった。

私の携帯に通知が入る。玲美だ。

「ごめん!今日坂崎くんと泊まることにしたわ」

浮島が私に顔を近づけて、文字が並ぶ画面を隣から盗み見てきた。

浮島の右手が私を腰ごとグッと寄せる。

これが目当てでわざわざ会いに来たんだろうな。
だって男の子はサルだから。

浮島が右足の膝を私の左足にコツンコツンと当てる。

すごく物欲しそうな目で私を見ては、海の方に視線を投げる。私のことを飲み込みそうな目だった。

「俺も二人っきりになりたいなあ」

わざとそっぽ向きながら私に聞こえるように言った。

「部屋に来る?」

私が言うと、浮島は顎先で軽く頷いた。あまりにも思い通りに進んだ展開に驚いたような戸惑うような顔にも見えた。

私たちはサルだった。
盛りのついたサルだった。

ゲストハウスまで来た歩道をまっすぐ戻る。少し急ぐような足取りで、手も指先も絡め合って。

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