とある伯爵と不遇な男爵夫人の計画~虐げられるだけの結婚生活は捨てます~

第11話

 リューゼスト伯爵が帰ってきてから3日後。リューゼスト伯爵はなんと私の新たな戸籍を作ってきてくれた。
 
 私の新しい名前はユーリ・レティクル。ユーティアの名残が残っているのはとても嬉しい。

「可愛らしい名前ですね。ありがとうございます!」

 もう少ししたら、このリューゼスト伯爵邸を後にして仕事を探さなければならない。一応女子修道院の食堂とか、よさそうな所はいくつか目星がついている。

「それではちょっと用事がありますので……」
「ああ、まだ話は終わっていませんよ?」
「え? ああ、失礼しました……」

 ぺこりと頭を下げると、リューゼスト伯爵はその必要はないと言う風に両手を振る。

「謝らなくて大丈夫ですよ。悪い事をしたわけではございませんから」

 ここでリューゼスト伯爵がひょいっと私をお姫様抱っこして持ち上げる。あまりに軽々と持ち上げるものだから、思わずわっと大きな声で驚いてしまった。

「軽いですね……」
「あの、どこへ?」
「私の部屋です。ゆっくり話しましょう」

 という訳で連れてこられたのはリューゼスト伯爵の私室のひとつ。部屋の四方には本棚がずらりと並んでいる。書斎かしら?

「すごい本がたくさんありますね……」
「本を読むのは好きですのでね。ユーティアさんもよかったら読んでいってください。ああ、そうだこれにサインをお願いできますか?」

 さらりと机の上にあった書類を1枚手に取り、私に向けてきた。え、これ……婚姻届?!

「ええ! これって……婚姻……届……」
「リューゼスト伯爵夫人。これ以上ない就職先だと思うのですが、いかがですか?」
「で、でも……そんな……リューゼスト伯爵に私、釣り合う人間じゃないような……」
「私があなたにひとめぼれしたのだからそんなの関係ありませんよ? それに今のあなたは……」

 何を言うんだろうと思ったのと、彼が私の唇を奪ったのがほぼ同時だった。
 彼の唇からは先ほど飲んでいたのだろうか? さわやかな紅茶の香りが漂っている。口内で彼の舌が私の舌に巻き付いているのを、私はされるがままの状態になっているとそっと唾液が宝石のように滴り落ちながら唇が離れていった。

「誰のものでもないでしょう?」
「っ……リューゼスト伯爵……」

 さっきの口づけの感触が、まだ唇に残っている。ああ、これが大人の口づけ……。

「私はあなたと初めて会った時からひとめぼれしていました。これも全てあなたを助ける為に……あなたを手に入れる為に……!」
「……リューゼスト伯爵?」
「結婚して、いただけますか?」
「私で、いいのなら……」
「もちろん。あなたでなければいけないのです」

 にこやかに笑い、私の右手を取るリューゼスト伯爵。この人がいて本当によかったと思うのと共に、これからどうなるのだろう? という、今後の未来へ向けての期待とちょっとした怖さが入り混じっている。
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