とある伯爵と不遇な男爵夫人の計画~虐げられるだけの結婚生活は捨てます~

第5話

 それから私は入っている木箱ごと裏口から出て、馬車でリューゼスト伯爵の屋敷に送り届けられた。
 
 屋敷のエントランスホールにて木箱から出る事が出来、少しだけリューゼスト伯爵に中を案内してもらったのだけど、屋敷内はとても清潔感があり、エレミー男爵家の屋敷よりもとにかく広い。特に屋敷中央の中庭には花々がたくさん植えられていて、蝶々も2.3匹姿を見せていた。

「では、これからあなたが倒れて死んだとエレミー男爵家とあなたのご実家にご報告しにまいります」

 エントランスホールで私に数秒程笑みを向けた後、リューゼスト伯爵は元来た道を引き返していく。

「ユーティア様。お腹はすいていませんか?」

 私の右隣にいつの間にか私と同い年くらいの美人なメイドが2人いた。この屋敷、メイドいるのね。
 うちはマレナお義母様とクララが浪費して借金こさえているせいでメイドやコックは雇えないのを思い出す。

「少しすきましたね……」
「お食事をご用意しております。食堂へどうぞ……」

 もう食事を用意してくれてるなんて。嬉しさと予想外の出来事で混乱しそうだが、メイドに促されて食堂へ足を踏み入れる。

「わあ、広い……」

 大人数での会食も余裕そうな食堂の真ん中に鎮座するテーブルには、すでにベテランそうなコックが2人待機している。

「ユーティア様でしょうか。こちらへどうぞ」

 ぎこちない動きで茶色い年季の入った椅子に腰掛けると、数秒後に前菜が運び込まれてきた。
 ああ、他人が作った料理を食べるなんていつぶりだろう。

「季節の葉野菜と焼貝の前菜となります」
「ありがとうございます。いただきます」

 焼貝は東の国で採れるハマグリみたい。野菜はシャキシャキしていて美味しいし、オイルと酢が混ざり合ったドレッシングが食欲を刺激させる。

「ごちそうさまでした」
「メインになります」

 メインは鳥肉のステーキ! パンも美味しいしステーキは思ったよりも柔らかくてとにかく美味しくてナイフとフォークが止まらない。

「ごちそうさまでした」
「デザートもご用意しております」

 デザートはなんと小さなケーキだった。ケーキはクララに言われてよく作っていたっけ。
 でも、もうクララ達にしばらくは食事を作らなくていいのか。ああ、それだけで嬉しい。

「甘くて……ジャムも効いていて美味しいです。こんなに美味しい食事初めて食べました」
「エレミー男爵家は確か貧乏だと聞いておりますが」

 コック達が心配そうに顔を見合わせている。ここは正直に話しても良さそうね。
 という訳でエレミー家の内情をコックとメイドらに詳しくは教える。
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