とある伯爵と不遇な男爵夫人の計画~虐げられるだけの結婚生活は捨てます~

第6話

「まあ、そんな事が……」

 予想通りの同情の視線。心の底から気持ちよさが湧き上がってきた。
 やっぱり今までの環境は間違っていたのね。

「ここにいれば、ユーティア様は理不尽な扱いを受ける事はありません。しばしの間ですが、ご安心ください」
「ありがとうございます」

 この屋敷は私にとって身の安全と精神の安全を保証してくれる場所なのが改めて理解できた。リューゼスト伯爵には感謝しかない。

「しばらくしましたらゲストルームにご案内します。そちらで宿泊頂くご予定になっております」
「ありがとう、お願いします」

 今はお腹いっぱいだから、もう少し食堂で休憩していこう。
 さて、そろそろエレミー家に連絡が行っているかもしれない。ひょっとしたら実家にも……。

 実家に関しては悪くない。大家族だったからそりゃあ、きょうだいとくだらない喧嘩をした事はあるけど、皆いい人だ。

(実家の皆には申し訳ないけど……付き合ってもらおう)

 ああ、そういえば私は今死んだ事になってるけど、すべてが終われば私の死は嘘だって皆に知らされるのかしら?
 それはそれで悪意のあるいたずらで面白そうだし、いっその事嘘だとは伝えずに名前も全部変えて新しい人生を歩むのも悪くないわね。家事は出来るから食堂で働く……なんてのもいいかも。
 
< 6 / 11 >

この作品をシェア

pagetop