悲劇のセイレーンにささやかな愛を



こんなのは初めてだ。
恋って案外複雑なんだな。



「……澪ちゃん、伴奏お疲れ様!」



結局こんな普通の会話しかできない。
惨めになりそうだ。



『ありがとう!秋斗くんもソリおつかれさま』

「ミスりそうになって焦ったー」



ふふっ、と笑う彼女。

……はぁ、可愛い。

気づいたらこんな言葉が口をついて出た。



「澪ちゃんってさ、モテるし何人にも告られてんだろ?」

『しすいに止められるけど』

「それはそれとして。止められなかった時は、なんで断ってきたの?」



そう、俺もてっきり紫水が全部阻止しているのだと思っていた。

しかし風の噂によると澪ちゃんへの想いが強い奴らはメールや手紙、紫水の目をかいくぐって告白してきたらしい。

多分この事実は紫水も知らないと思う。

まぁ、もちろん全員振られたらしいけど。


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