悲劇のセイレーンにささやかな愛を



『だとしたらそれも、しすいのおかげなんだ』



勝てっこないな。

そりゃ、俺がどうやったって振り向かないはずだ。



「……そんなに紫水のことが好きなら、諦めるしかないな!がんばれよ」



今度は澪ちゃんが固まり、一瞬顔を歪めたかと思うと。



『ありがとう』



と口を動かして伝えてくれた。





こちらこそ『ありがとう』だよ、澪ちゃん。
感謝しても仕切れないな。

俺に自分の芯を持つことの大切さ。

人を好きになることの楽しさ。

振り向かせることの難しさ。

そう、俺にいろんなものを教えてくれたんだ。

これからは恩返しとして。

君の幸せをただ願うよ──。




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