悲劇のセイレーンにささやかな愛を
「これが、母さん、父さん、奈月」
「……っ!」
いつものように、和室の仏壇の前に正座する。
そこへ何気なくやってきた澪は、足を止めて硬直。
慣れた手つきで取り出した線香に火を灯す俺を見て、悲痛に顔を歪めた。
「3人に挨拶、しよ」
「……」
そう声をかけても、明らかに暗い表情で俯いてる。
「そんな顔すんなって。ほら、こっち来て」
じっと見つめると、澪はなぜか一礼してから隣に座った。
「……この子、澪ね。今日からうちに住むから歓迎してやって」
よろしくおねがいします、と口パクで伝えて頭を下げた澪。
少し沈黙が続いたのち、俺はふと口を開いた。
「な、家族の話……聞いてくれるか?」
「……?」
「今まで誰にも話すつもりなかったけど、澪になら話したいと思えたから」
「……」
彼女は数秒間黙った後、コクリと頷いた。