悲劇のセイレーンにささやかな愛を





父と母は、高校時代から付き合って、そのまま結婚まで続いた。

大学も就職先も一緒。まさに運命共同体。

妊娠・出産もうまく行き、産まれたのが俺と奈月だった。

双子の出産でいうのはやっぱり大変だったらしいな。
母はそれから体調をよく崩すようになった。

俺は小さい頃から冷静で、いつもどこか遠くから世界を見てた気がする。

あまりにも年齢にふさわしくない言動や佇まいだったらしく、親戚からは距離を置かれていた。

反対に双子の片割れの奈月は、明るく快活で元気いっぱいという、まさに俺と正反対だった。

よくイタズラなんかもするから、俺が代わりに謝りに行ったりしてたな。

俺らは学校ではあまり一緒にいなかったけど、不仲な訳じゃなくて、家では互いに色々なことを話した。

奈月は私立の高校に受かり、別になったけど。

薄い茶色のウェーブがかかった髪を上半分だけまとめて、元々整っていた顔には少し化粧もして。

帰ってくるなり告白された話を聞かされたのもたくさんあるな。

そんなどこにでもいるような家族。
が崩れるのは一瞬なんだ。

冬だ。凍えるように寒い日だった。

部活が終わって、いつものように家に帰ったんだ。

ドアを開けたら、人の気配がなくて。

ああどこか買い物でも行ったのかなって、少し思っただけで。

特に何も考えずにシャワーを浴び終わると、電話が鳴った。
 

< 25 / 45 >

この作品をシェア

pagetop