悲劇のセイレーンにささやかな愛を
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今日も五人で登校していると、珍しく穂乃莉先輩が声をかけてきた。
「おっはよー片桐くん!」
「急にどうしたんですか」
「冷たいな〜。あーっ、噂のかわい子ちゃんだ!ほんとに超絶美人すぎる」
「澪を怖がらせないでください」
「わっ、過保護か」
言われ慣れたセリフにうんざりしていると、澪が肩をトントンと叩いてきた。
『誰?』
「あー、3年の咲坂穂乃莉先輩。委員会が一緒で」
「こいつ、冷たくてつまんないでしょ?いつも意地悪なことばっかり言うんだもんな〜」
「余計なこと言うな……です」
「ぷっ、敬語取れかけてるー!」
ケタケタと明るく笑っている先輩をチラリと見てから、澪は下を向きながらノートを差し出した。
『仲良しなんだね』
「仲良し?全くだけど」
『お似合いだよ』
「何言って……ちょ、おい澪」
突拍子もなく書かれた言葉に眉をひそめていると、澪はスタスタと人混みに紛れて行ってしまった。
「……先輩」
「何ー?」
「許しませんからね」
「えっ⁉︎ いや怖いって急に!」