悲劇のセイレーンにささやかな愛を
「お前、女子の世界がどんだけこえーのか知ってるのかよ!」
「どういうことだ……!」
「妬み恨みだよ!勘だけど、人気もあるお前の横にいる澪ちゃんが羨ましくて、やっかんだ女子の仕業なんだ」
走りながらはっとする。
色々な女子を取っ替え引っ替えしてきた秋斗だ。
秋斗が悪いにしても、女子同士のいざこざは何個もあったに違いない。
聞いたことがある。いじめや嫌がらせは、そんな小さな嫉妬から始まるのが多いことを。
もし澪がその対象になっていたのだとしたら。
今まであった失くしものは全部、その女子のせいだとしたら。
顔が青ざめていく気がする。
なんで俺は気づけなかった。
なんで澪に無理矢理でも聞き出さなかった。
何回もあった時点でおかしいと思うべきだったのに。
「〜〜〜!……!」
廊下を走っていると、その声はすぐに聞こえてきた。
明らかに話し声じゃない、女子の怒鳴り声。
しかも複数の……。
角を曲がった瞬間、俺らは思わず立ち止まった。
そこは人気のない廊下の端っこで。