悲劇のセイレーンにささやかな愛を
【秋斗 side】
放課後。
「あ、秋斗みーっけ!今日秋斗の家行ける?」
3日前だか、知り合った女子に声をかけられた。
「おー、いーよ。……あ」
「?どしたの?」
「わりー、学校に忘れもんしたわ。明日でもいい?」
「しょーがないな。何か奢ってよね!」
課題のプリントを机の上に置いてきたことに気づき、引き返す。
チャラ男?たぶらかしてる?遊んでる?
どうとも言えばいい。
彼女?そんなん、誰でもいい。
両親に異常なほど甘やかされて育った俺は、いつからか笑顔が定着していた。
褒められるままそれに答えて、欲しいと言えばなんでももらえて。
だから無理にでも明るく元気に振る舞わないと、自分が壊れてしまいそうだった。
自分の生き方なんて、とっくの昔に忘れてしまった。