悲劇のセイレーンにささやかな愛を
「じゃあ、俺焼きそば買いに行くから紫水はイカ焼き頼む。澪ちゃんは焼きとうもろこしでいい?」
「りょーかい」
秋斗の分裂作戦に同意すると、澪もグッと両手の親指を立てた。
3人分のイカ焼きを買って戻ると。
「……!澪⁉︎ と、秋斗……?」
数人の浴衣姿の大学生らしき男に囲まれて怯えている澪の前に、秋斗が彼女を守るようにして立っていた。
ああ、容易に予想できただろうに。
澪を一人にしたら男がたかることなんて。
いやそれよりも、なんだあの秋斗の目は。
あの凄み……大学生の男らも笑顔が引きつっているほどだ。
長年一緒にいた俺でさえも初めて見る。
入ることができず、後ろから声をかけようとした時。