悲劇のセイレーンにささやかな愛を



「じゃあ、俺焼きそば買いに行くから紫水はイカ焼き頼む。澪ちゃんは焼きとうもろこしでいい?」

「りょーかい」



秋斗の分裂作戦に同意すると、澪もグッと両手の親指を立てた。

3人分のイカ焼きを買って戻ると。



「……!澪⁉︎ と、秋斗……?」



数人の浴衣姿の大学生らしき男に囲まれて怯えている澪の前に、秋斗が彼女を守るようにして立っていた。

ああ、容易に予想できただろうに。
澪を一人にしたら男がたかることなんて。


いやそれよりも、なんだあの秋斗の目は。

あの凄み……大学生の男らも笑顔が引きつっているほどだ。

長年一緒にいた俺でさえも初めて見る。

入ることができず、後ろから声をかけようとした時。
 

< 84 / 123 >

この作品をシェア

pagetop