悲劇のセイレーンにささやかな愛を
「……彼女、俺のなんで。勝手に触んないでくれる?」
秋斗の地を響かせるような低い声が聞こえた。
高校生一人に圧倒される大学生三人。
抵抗は無駄だと思ったのか、顔を歪めながら離れて行った。
「……大丈夫だった?澪ちゃん」
「っ……、」
「ごめん、さっきは勝手に彼氏ヅラして。まぁそうでもしないと諦めてくれなさそうだったから」
フルフル、と首を横に振る澪。
顔を上げた彼女の顔には、少しの怯えと共に安堵の表情が浮かんでいた。
思わず出て行こうか迷った。
その表情を向けるのは俺であってほしいという気持ちと、秋斗と澪の仲を割いてもいいのかという思いとで揺れて。
結果後者が打ち勝ち。
俺は踵を返し、冷めてしまった三人分のイカ焼きを片手に川の方へ戻った。