悲劇のセイレーンにささやかな愛を
指揮を凰牙に褒めてもらっていると、拗ねたように聞いてきた秋斗。
ソプラノ、アルト、テノールで一人ずつソリを選抜した中で、彩芽はソプラノ、秋斗がテノールのソリだ。
ちなみに凰牙も歌は上手いが、合唱祭実行委員だからできなかったとのこと。
「ごめん、澪ちゃんの伴奏だからつい……」
『秋斗くんのソリ、よかったよ!』
「っ……ありがと!」
申し訳なさそうに彩芽の方を見ていた秋斗に、澪がノートを差し出した。
それを見た秋斗が、くしゃりと笑って彼女の方を向く……。
「……なぁ、秋斗」
「ん?」
「ちょっと、いいか」
俺は秋斗を廊下の方へ引っ張り、向かい合った。
違和感がまだ拭えていない。
花火大会以来から──。