悲劇のセイレーンにささやかな愛を
あの日か。
確か俺が委員会で、澪を待たせていた日。
戻るとなぜか固まった秋斗がいたのを覚えている。
「……そうか」
だとしたら辻褄が合う。
やけにまともな行動をしていたのも、ふざけていなかったのも。
澪にだけ、あんな優しい顔をしていたのも……。
目の前にいる秋斗は、今までに見たことがないような真剣で純粋な表情をしていた。
「紫水には申し訳ないけど、俺、本気で澪ちゃんのこと好きなんだ」
あのプレイボーイが。
一途に、一人の女子を好きになるなんて。
あの無自覚に天然な美少女が。
おちゃらけてばかりだった遊び男子を変えるなんて。