悲劇のセイレーンにささやかな愛を



あの日か。

確か俺が委員会で、澪を待たせていた日。

戻るとなぜか固まった秋斗がいたのを覚えている。



「……そうか」



だとしたら辻褄が合う。

やけにまともな行動をしていたのも、ふざけていなかったのも。


澪にだけ、あんな優しい顔をしていたのも……。

目の前にいる秋斗は、今までに見たことがないような真剣で純粋な表情をしていた。



「紫水には申し訳ないけど、俺、本気で澪ちゃんのこと好きなんだ」



あのプレイボーイが。

一途に、一人の女子を好きになるなんて。

あの無自覚に天然な美少女が。

おちゃらけてばかりだった遊び男子を変えるなんて。


< 95 / 123 >

この作品をシェア

pagetop