悲劇のセイレーンにささやかな愛を



こんな汚い感情、初めて感じた。

胸が締め付けられるように苦しくなる。

本能のままに、澪は俺のものだと言い聞かせている。



『恋はね、綺麗なものばかりじゃないんだよ?同じくらい、苦しくなるし痛くもなるの』

「……、奈月」



不意に、奈月の声が脳裏に響いてきた。

中学3年生くらいのものだ。
その頃、奈月は仲が良好な彼氏がいた。

頰を真っ赤に染めながら説いてくれたのを思い出す。

あの時は気にも留めていなかったけど、今なら分かるんだ、奈月。

こんなに誰かを思ったことがないってくらい、心臓が早鐘を打っている。



──俺は、澪のことが好きだ。


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