本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 ぼそっとセリカがつぶやいた。そのセリカの口を、イレクスが慌てて塞いでいる。

「リティス嬢、同伴してもらえないだろうか。噂になるのは気にしなくていい。図書館の職員に同伴を依頼するのは今までにもあったことだから」

「お役に立てるのでしたら……ああ、でもドレスを調達しないといけませんね。手持ちのものが使えればいいのですが」

 家を出る時、領地で誰かに御呼ばれした時には備えても、夜会用のドレスは持ち出さなかった。一度家に戻った時も、持ち帰ったトランクをそのまま持ち出しただけ。

 ドレスなんて必要ないと思っていたけれど――早まったな、と後悔した。

 曽祖母のトランクを使えば、屋敷にある曽祖母の隠し部屋には行けるが、隠し部屋から屋敷内部へ移動することはできない。

 こっそり自室に行って、ドレスを持ち出してくるのは不可能だ。トランクをひっかき回せば、一着か二着、出てくるかもしれない。

「……そこは俺に任せてもらえないか。同伴者の着る物を用意するのは、こちらの義務だから」

 義務、というほどのことでもないと思うけれど……。

 断ろうとして、思い返す。

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