本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 慌てて隠し部屋を飛び出し、自室へと戻る。

 妙なことに隠し部屋に出入りしているのは、リティスだけだった。父も、母も、フィノラも存在すら気づいていないようだ。

 たしかに隠し部屋に置かれている魔術書が大半だから、この屋敷の人達は興味がないかもしれない。

 だが、この点について深く考えたことはないし、家族に話をするつもりもない。部屋の書物は、リティスにとって人生の道しるべでもあるからだ。

(……なんで、毎回呼ばれるのかしら)

 リティスを視界に入れたくなければ一緒に食事をしなければよさそうなものなのに、律義なほどにリティスも食事の席に呼ばれる。

 と言っても、家族の団欒に混ぜてもらえるわけではない。リティスには誰も話しかけないし、こちらから話しかけても返事をすることはない。

 それならば、自室で食事をさせればよさそうなものなのに、なぜか食事の時間になると使用人が部屋まで呼びに来るのだ。

 けれど、今日は違っていた。

 家族が楽しそうに話をしながら食事をしている横で、黙々と食事を終えたリティスが席を立とうとした時だった。父が、リティスの名を呼んだのである。

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