本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 王宮からの使者に連れられ、王宮に入ったかと思うと、長年勤めてきたであろう経験豊富そうな年配の侍女に浴室へと連れていかれた。

「まー、お肌が綺麗だこと」

「髪も素敵。これほど見事な黒髪はなかなか見ませんわ」

「東方には、美しい黒髪を指すのに『黒檀のような』という言葉があるそうですよ」

「こら、あなた達口を慎みなさい」

 あれあれ、と心の中で悲鳴を上げたけれど、後ずさろうとしたら、年配の侍女がにっこりと微笑みかけてきた。微笑まれたのに動けなくなるというのはどういうわけだ。

 あっという間に着ているものを奪われたかと思ったら、そのまま浴室に押し込まれ、髪や身体を洗われ、香りのいいクリームや香油で丹念に手入れされる。

「普段、お肌の手入れはどうなさっていますの?」

「どうって……自家製の化粧水やクリームで」

 曽祖母の隠し部屋には、自分を美しく見せるための化粧品を作る魔術というのもあった。

 今の時代で言えば、錬金術に該当するものだろうか。昔は、そのあたりの区分もあいまいだったようだ。

「まあ、自家製?」

「売り出すつもりはありませんか?」

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