本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 エデルはおろおろとフィノラをなだめている。

 リティスに対する時とはまったく違う対応に、笑ってしまいそうになった。

 やはり、フィノラの方が大切なのだろう。

「染み抜きぐらいならここでやってあげるわ。せっかくのパーティーだもの。楽しんでね」

 手のひらに浮かべたのは魔術陣。ドレスにかかったワインを吸い上げる。

「……なんで?」

 フィノラの口からは、「なんで」しか出てこない。それはそうだろう。

 伯爵家にいた頃は、魔術を使えるなんて口にしたことはない。それも、今は失われた魔術陣を使う古代魔術を。

「ほら、これでいいでしょう? もうお行きなさいな。目立ってしまっているわよ」

「え、ええ……」

 リティスが魔術を使ったことに、フィノラは衝撃を覚えているようだった。エデルの腕に縋り、よろよろとその場を立ち去る。

(……うーん、おとなしくしていてくれたらいいんだけど)

 リティスが魔術を使えることを、生家の人々には知らせるつもりはなかった。

 けれど、あの場できゃんきゃんわめいているフィノラを黙らせるには、あれしかないと思ったのだ。

 でも、失敗だっただろうか。
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