本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
「とても下手なんですけど」

「俺も慌てて復習したクチだ。リティス嬢は?」

「マナーの復習の時に、ダンスも復習しろって言われました」

 顔を見合わせてくすくすと笑う。

 ここが、夜会であることも忘れてしまいそうな気安さ。

 そう、リティスと彼の間にあるのはこんな空気だ。そこに、男女の情が交ざる余地なんてない。

「それなら、似たようなものだ」

「よろしくお願いします」

 差し出された手に、そっと自分の手を重ねる。

 アザレウスは、迷うことなくリティスを連れ出した。

「嘘つき! 慌てて復習したって嘘ですよね!」

「口を開く余裕があるなら、リティス嬢だって問題ないだろう」

 何が、慌てて復習したクチだ。リティスは心の中で思いきり文句を言った。いや、口にも出してしまっていたけれど。

 アザレウスのダンスは非常に巧み――リティスの知る限りでは最高だった。

 迷うことなくステップを踏み、リティスが踊りやすいように的確にリードしてくれる。これで慌てて復習したというのであれば、きっと天才に違いない。

「……楽しくない?」

「いいえ、楽しいですよ。とても!」

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