本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~

「本当、ごめんなさい。エデル様……淑女らしくなかったわ。反省しています」

 テーブル越しに手を伸ばし、エデルをうるうるとした目で見る。

「わかっているよ。もちろん……お願いできないかな?」

 宰相がフィノラに何を期待しているのかはよくわからないけれど……と、差し出された本を手に、一応開いてみる。

(……これって)

 他の人には読めないかもしれないけれど、フィノラには読める。読めてしまう。

(これは、選ばれた者にしか読めない本なのね……)

 本の最初の数ページに目を通しただけでわかる。

 この本は、資格を持つ者にしか読めないのだ。いわば、読み手を選ぶ本である。

 そして、フィノラはその読み手に選ばれた。この書物に書かれている術を身に付けたなら、再び姉より上に行くことができる。

 ――そして。

 フィノラが才能を見せつけたなら。

 アザレウスの隣に立つのは、リティスではなくフィノラだ。

「ねえ、エデル様」

 甘い蕩けそうな声で彼の名を呼ぶ。

「時間はかかってしまいそうだけれど、読めそうな気がします。しばらく、お預かりしてもいいかしら?」

< 190 / 288 >

この作品をシェア

pagetop