本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 そう言った時のアザレウスはじつにいい笑顔で。

 彼の魔術師としての好奇心に火をつけてしまったことに、この時初めて気がついた。



 さすがに、リティスの部屋にアザレウスを招くわけにもいかない。その日の勤務が終わったあと、リティスはトランクを持って、王宮魔術師団を再訪した。

 アザレウス達は、魔術書が盗まれている事件の調査にあたることになり、しばらく忙しくなるため、その前に見ておきたいという要望があったのだ。

「……トランク? いや、これはただのトランクではないな」

「魔術がかけられています。この中には、いろいろなものが入っているんですよ」

「……すごいな。これは、トランク本体に魔術を刻んであるのか……古代魔術の応用だな。なるほど、こうやって刻む――いや、駄目だ。これだけでは魔術を保てない。何か別の工夫があるはず……というか、このトランク、魔力はどうやって保持してるんだ」

「殿下?」

「空中にあるという魔力か? 持ち主の魔力を吸い取るという類のものではなさそうだな。となると、このトランクのどこかに」

 いや、今日の本題はこのトランクではないのだが。

< 197 / 288 >

この作品をシェア

pagetop