本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 リティスの言葉なんて、まったく耳に届いていないかのようにアザレウスは様々な方向からトランクを眺めては声を上げている。

(……こんな殿下を見るのは初めて)

 リティスにとって、アザレウスは年上の落ち着いた男性だった。

 子供達を可愛がって、リティスには親切にしてくれて。

 なのに、珍しいおもちゃを与えられた子供のように、リティスのトランクに夢中になっている様は可愛らしい。

 そう、可愛らしいと思ってしまったのだ。

(私ってば、何を考えているの)

 アザレウスのことを可愛い、だなんてリティスがもっていい感想ではない。
『――おい!』

「パパベル!」

 いきなり飛び上がったパパベルがアザレウスの後頭部を殴りつけ、リティスは悲鳴を上げた。

 いくらパパベルが柔らかいぬいぐるみみたいなものだとはいえ、王弟殿下を殴るのはやり過ぎだ。

「……痛い」

「殿下、申し訳ありません。パパベル、あなた何やってるの!」

『だって、そいつ、本題忘れてるじゃねぇか』

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