本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 整った顔に間近で見つめられ、リティスの心臓が危険な鼓動を刻み始めた。どうしよう。あと一分このままでいたら、確実に心臓が口から飛び出してしまう。

「失われたものはないか」

「……それは、調べてみないと」

 ドキドキしながらも、そっとアザレウスの手から逃れる。

 本当に、心臓に悪い。彼の方は、リティスなんてまったく気にしていないのがわかってしまうからなおさら性質が悪い。

『その必要はないとオレは思うぞ?』

「なんで?」

『お前、この部屋から本を持ち出したことはないだろ』

「ないわね。見つかったら、大変なことになるって知ってたもの」

 もし、リティスが貴重な本を手に入れたと気づいたなら。あの家の人々はリティスからそれを取り上げるのにためらうことなんてないだろう。

 もしかしたら、この部屋についても白状させられたかもしれない。

 家族に対して冷たいかもしれないものの、この部屋はリティスにとっては孤独を埋めるための場所だった。

 そのため、ここに運び込んだものはあっても、ここから持ち出したものは何もない。

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