本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 というか、いつの間にかリティスの右手は、彼の両手の中に包みこまれていた。

 まったく気がついていなかった。いつの間に?

 ――それでも、彼を見ていればわかってしまう。

 リティスの手を包みこんでいる彼の手の大きさ、温かさ。

 こちらを見上げている真摯な表情。

「私は、家を出た身です。貴族籍を捨てるつもりでした」

「知っている」

「……問題になりませんか?」

「ならない。俺が望めば、そんなものどうにでもできるし――リティス嬢が望むのなら俺が王家から抜けてもいい」

「それはどうかと思うのですが!」

 悲鳴じみた声をリティスは上げた。一瞬の間を置き、見つめ合ったふたりはどちらからともなく笑い始める。

「殿下に捨てられないよう努力します」

「アザレウス」

「……え?」

「名前で呼んでくれてもいいと思うんだ。俺も、リティスと呼ぶから」

 当り前のような口調で言われ、リティスは目を瞬かせた。

 本当に彼を名前で呼んでしまっていいのだろうか。

「アザレウス、様……?」

「様はいらない」

「それは無理ですよ!」

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