本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 リティスも、アザレウスも動かなかった。まるで、凍り付いてしまったかのように。

 フィノラの指先から、魔術が発動する――と、思ったが、次の瞬間、集められた魔力は霧散してしまった。

「どういうこと? なんで?」

「この屋敷は、転移魔術と攻撃魔術を使えないようにする魔道具で封じさせてもらった。こちらに害を持っていない限り、他の魔術は使えるがな」

 アザレウスが魔術師達に設置させたのは、この屋敷の中で攻撃魔術を使えないようにする魔道具だった。ちなみに、これもまたアザレウスが開発したものである。

 王宮の地下書庫に保管されていた魔道具の作り方の手引書を参考に作ったものだそうだ。

 手引書に書かれていたのはすべての魔術を封じるものだったが、転移魔術と攻撃魔術だけ使えなくなるように改良したそうだ。

「今まで必要のない話を続けていたのは、なんのためだと思う? 魔道具を設置し、作動させるまでの時間を稼ぎたかっただけだ」

 アザレウスは、フィノラをにらみつけた。
 馬車を降りた時、同行していた魔術師達が運んで行ったのが、そのための魔道具だ。

「……私は、何も知らない! 知りません!」
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