本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 宰相の信頼も厚く、出世が約束されている今ならば、フィノラと結婚させた方がいいと思ったのだろう。

「ごめんなさいね、お姉様。私が、エデル様のことを好きになってしまったばかりに……お姉様には、申し訳ないことをしたと思っているの」

 涙を追い払おうとしているように、目をぱちぱちとさせながらフィノラが言う。悪意なんて、まったく感じさせない表情だ。

「フィノラが謝る必要なんてないんだ。全部……こいつが悪いんだ!」
「エデル様、でも……でも……!」

 フィノラはエデルの胸に顔を埋めてしまい、リティスの顔からすんっと表情が抜け落ちた。いったい、何を見せられているのだろう。
「……承知いたしました」

 リティスにできることなんて他にない。頭を下げ、彼の言葉を受け入れた。

 

 帰宅後、父はリティスを書斎へと呼び出した。

 父が仕事に使っている部屋は、多数の資料を収めた書棚と大きな机が置かれている。いずれもウォルナット製の重厚なもの。長い間、伯爵家で大切に使われてきた品だ。
着替える間もなく、外出着のまま父の前に立つ。

「エデル殿とお前の婚約は破棄する」
「はい、承知しております」
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