本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 母とフィノラに挨拶しておこうかと一瞬思ったけれど、それはやめておくことにした。きっと二人ともリティスの顔は見たくないだろう。

 それより、領地に行けば、今までより自由に過ごすことができる。

 言われたことを投げ出して領地に向かうのはやめるという選択肢もあるけれど、衣食住が保証された生活をあえて捨てる必要もない。

 もう少し、のんびり曽祖母の遺した本を読む時間が欲しい。

 足取りも軽く家を出ていくリティスを見送ったのは、この屋敷に長年勤めてきた執事と家政婦だけだった。

 

 伯爵家の馬車を使うと面倒だから、あえて乗合馬車を使って領地に向かう。

(……最高!)

 父の目を気にする必要もない。なんて素晴らしい。トランクから本を取り出して読みふける。

「あら、難しい本を読んでいるのね」

「魔術師見習いなんですよー!」

 リティスが読んでいるのは、魔術の入門書だ。曽祖母の隠し部屋にあった本は、古い形式の魔術だ。そちらばかり練習していたため、今主流の魔術は初心者もいいところなのである。

「頑張ってね。よかったら、これ食べて」

< 34 / 288 >

この作品をシェア

pagetop