本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 こうして人と触れ合えるのも、伯爵家の馬車を使わないから。あの家を離れた解放感がますます大きくなってきそうだ。

(……楽しい、楽しい……!)

 疲れたら、魔術で自分を癒やしてもいいし、移動を楽にできる魔術もいろいろ知っている。伯爵家を出た今、魔術を使うのをためらう必要もない。
 歩きながらあれこれ魔術について考えていると、街道の向こう側から異様な雰囲気が伝わってきた。

(……なんだろ)

 一瞬足を止めようかと思ったが、逃げなければならない理由もない。何かあった時すぐに対処できるようにと注意は払いながらも、そちらに向かう。

「……わあ」

 ゆっくりと進んでくるのは、馬に乗ったり、馬車に乗ったりした人達だった。鎧を身に着けているのは騎士、ローブを身に着けているのは魔術師だろうか。

 荷車も何台か馬に引かせているようだ。怪我を負っている人もいるように見える。

(……変なの)

 魔術の中には、治癒魔術というものがある。

 魔力を使って怪我を瞬時に治すものだ。

 だが、今、目の前に見えている一行は、治癒魔術を用いた気配はない。

(……このまま戻るのでは、大変よねぇ)

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