本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 そもそも、手当ての必要な者は、あと五人もいない。魔術師団の魔術師達も、懸命に治療にあたっている。

 あっという間に残り五人も治したリティスは、トランクを手に取った。

 思わぬところで時間を食ってしまった。時間を食ったことに問題はないが、ラングレーで宿が取れないと困る。

「では、皆さん。お気をつけて」

「待ってくれ。礼がしたい」

 治療を終えて立ち去ろうとしたら、アザレウスはリティスを呼び止めた。

「いえいえ、私が勝手にやったことですし。皆さんが無事に帰れれば充分です。ありがとうと言ってくださいましたし、私は満足です」

 魔物討伐を命がけで行ってきた人達だ。リティスが怪我を治したからといって、お礼をもらうのは違う気がした。

「では、せめて馬車の出るところまで送ろう。どこに行くつもりだった?」

「ラングレーです」

「我々の目的地もそこだ。どうだろう、そこまで我々の馬車を使うというのは」

「……え?」

 いや、それはありがた迷惑――と口にしかけて呑み込んだ。だてに十七年、貴族令嬢として生きてはいない。

「……ありがとうございます。でも、ご迷惑でしょうし」

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