本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
「ええ、そうよ。ちなみにどんな御用なのかは私も知らないから、私に聞くだけ無駄よ」

 フィノラの方から話しかけてきたかと思えば、やはりアザレウスのことが気になっているようだ。伯爵家とはいえ、王家の方をお招きしたことはない。

「求婚、ではないわよね……?」

 伺うような目で、フィノラはこちらを見つめてくる。リティスは肩をすくめた。

 それだけはあり得ない。

 二十七になるまで、浮いた話も――まあ、まったくなかったとは言わないが根も葉もない噂にすぎない――ない人だ。

 彼がリティスに恋愛感情を持っているとは思えないし、そもそも政略的にこの家と繋がる利点が王家にはない。

「違うわね。さあ、もうお行きなさいな。用もないのに、殿下の前をうろうろしていたら、慎みがないと思われてしまうわよ」

「……まあ、用がないなんて。せっかく我が家にお越しになったのに、ご挨拶もしないなんて、その方が無礼ではなくて?」

「ご挨拶は、お父様と一緒にしなさいな。ほら、そろそろ到着のお時間よ」

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