本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 フィノラが勝手にアザレウスの前に出るようなことがなければそれでいい。優しい口調でたしなめたら、壁の時計を見上げたフィノラははっとなった。

 それから慌てた様子で、自分の部屋の方へと走っていく。アザレウスとの対面前に、身だしなみを確認しておこうというのだろう。

 廊下を走るなんて、淑女としての慎みはどこにやったのだ。突っ込もうとしてやめておいた。そうしたところで、ろくなことにはならない。

 念のために、玄関ホールの鏡でもう一度確認しておく。

(髪型、よし、化粧、よし、ドレス、乱れてない)

 王家の人の前に出るにあたって、失礼のない状態であることを確認してから、扉を開いて外に出る。

 車寄せのところまで出たところで、門の向こう側から立派な馬車が入ってくるのが見えた。
 真っ白な馬車には、金で飾りがつけられ、護衛の騎士が周囲を囲んでいた。王都の中はそう危険ではないから護衛の数も多くはない。騎士は十名ほどだろうか。

(あれが、王家の馬車ね。でも、私に何の用かしら)

 馬車が到着すると、御者が恭しく扉を開く。降りてきたのは、ラングレー近くで顔を合わせたアザレウスだった。

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