本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 魔術が使えないということになっているリティスとは違い、フィノラは将来有望な魔術師ということになっている。それもかなりの腕前で、高位の魔術まで使うことができる。

 この家のリティスの扱いの悪さの原因に、リティスは魔術を使えないと思われていたというのもあった。今後も明らかにするつもりはない。

「古代魔術は使えるのか?」

「いいえ、お父様。知識があるだけです。でも、その知識が役立つ日が来たのだから、学んできたことは無駄ではありませんでしたね」

 嫌味を言ったつもりはないのだが、父はむっすりと黙り込んだ。家族の温かい会話は、やはりリティスには縁のないもののようだ。

「お父様、お食事を終えたら少しお時間をいただけますか? 領地のことで、報告しなければならないことがあるのです」

「――わかった」

 父に、リティスへの愛が期待できないのはもうわかっている。だが、領民のためにやるべきことはやっておきたい。

「リティス……」

「はい、お母様」

 食後のデザートが運ばれてきたところで、母が口を開いた。

 この人が、リティスの名を呼んだことは、今まで何度あっただろうか。

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