本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
(……ほとんどなかったわね)

 嫁いできた当時、存命だった曽祖母は母にきつくあたっていた。その曽祖母の容姿を受け継いだからという理由で、リティスは家族から冷淡な扱いを受けてきた。

 久しぶりに名を呼ばれたな、と思うだけでそれ以上の感慨は何もない。

「……身体には、気を付けなさい。王宮の方々に、迷惑をかけないように」

「はい」

 名を呼んだはいいものの、何を言えばいいのかはわからなかったようだ。

 ようやくそれだけを母は絞り出し、絞り出されたリティスの方も上手な返し方がわからなくてただ頷く。

 食後、お茶もそこそこに席を立ったリティスは、領地の資料をまとめたものを持って父の書斎を訪れた。

 ここに入るのは、領地に行くよう告げられた日以来だな、とぼんやりと思う。

 あの日同様、父は大きなデスクの向こう側に置かれた椅子に腰をかけ、リティスはその前に立たされたまま。

 長い話にはならないだろうから、これでいい。

「お父様、今の代官ですが交代させた方がいいです。予算に問題がありまして」

「問題?」

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