本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 子供達も、上手に誘えたことが嬉しかったのか、その場で飛び跳ねるようにして喜んでいる。

「ええと、リティス嬢。お手をどうぞ」

 イレクスが手を差し出してくれて、リティスは目をぱちくりとさせた。

 動きにくいドレスならばともかく、今は制服のローブだ。誰かの手を借りねばならないほど、動きにくいわけではない。

 実際、アザレウスからもこうやって手を差し出されたことはなかった。

「あー、マナーの勉強を始めたところなんだ。付き合ってもらえるとありがたい」

 アザレウスの言葉で納得した。リティスでエスコートの練習をするらしい。

「まあ、殿下。よろしいのですか? では、よろしくお願いいたしますね」

 イレクスに向かって微笑めば、彼はぱっと表情を明るくした。
 王宮図書館の職員になってから、まだひと月程度。だが、その間に貴族令嬢としての仮面はきっぱり捨ててしまった。

 それでも、長年の間学んできたマナーはリティスを裏切らない。

 差し出されたイレクスの手に、そっと自分の手を重ねる。

(……可愛い)

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