【コンテスト用シナリオ】恋は光の色をして私たちに降る

第一話 桜舞う出会い

◯由良の通う大学の準備室・朝・準備室は殺風景で机と椅子があり沢山の本棚が揃っている
一限目の授業の準備を始めている碧に由良が準備室の扉を数回ノックして開ける
由良「先生!分からないところがあって。聞いても良いですか?」
由良モノローグ(もう一年近く通い続けてるこの大学。朝、度々この場所を訪れてはわざと分からないふりをして授業の質問をするのが恒例になっている。それは、この人、成瀬碧のことが好きだからー)
碧「あぁ、別にいいけど」
由良モノローグ(四月、年度の初めで忙しい時期なのに先生は少しも嫌じゃなさそう微笑んでくれた)

碧の容姿・柔らかそうな黒髪に色白な肌・スラリと伸びた手足・(授業の時だけ眼鏡をかける)

◯次の教科の資料を手に取り準備をしていた碧はその手を止めて由良の方に目線をやり近づいて由良の持っている資料を覗き込んだ
由良「えっと、ここなんですけど」
由良(ち、近すぎる。まぁいつものことなんだけどね…。無自覚で先生はそれをやるから私の心臓持たないよ)
碧「ここ座って」
◯碧に促されて隣の椅子に腰掛ける由良
碧「で、どこだっけ?」
碧はそう言いながら今度は由良の手元にある資料を至近距離で覗き込む
由良(先生手が綺麗だなぁ。細くて白くて…)
碧「由良、聞いてる?」
ぼーっと先生を見つめている由良に碧は不思議そうな顔をして聞き返す
由良「え?あ、はい」
碧「そう?ならいいんだけど…てか」
碧は言いかけたと同時に由良の頭に手を伸ばしてそっと触れた
碧「桜の花びらついてる。ふふ、何で?」
碧は柔らかく笑い由良の頭上についていた桜の花びらをそっと指で摘んでじゃれるようにそれを由良に見せる
由良「へ?え、と。ありがとうございます…」
由良(桜よ、ありがとう…)
碧「春だからって遊んでないで勉強もしろよ?」
由良「はーい」
由良(先生、好きだなぁ)
由良「あの先生。今度」
"出かけませんか"と由良が口に出そうとしたその瞬間、ガラッと勢いよく準備室のドアが開いた
依澄「碧君いるー?」
初めて見る顔に由良は驚き扉の向こうのその姿に目を丸くした
◯背が高くスラっとした長い手足、綺麗な顔立ちに透き通った優しい声の依澄
由良モノローグ(明らかに目立つしモテそう…こんな人うちの大学にいたっけな?)
準備室の扉をくぐり抜けて依澄が入ってくる
碧「誰かと思ったら依澄か。今日だっけ?編入」
碧は遠慮なく"いずみ"とそう呼び、呼ばれた依澄が微笑んで頷きながら
依澄「今日だって言ってあったじゃんー」
語尾を伸ばしてフランクに話す
碧と知り合いなのはその場にいる由良にも一目瞭然だった
由良モノローグ(にしても、この2人が並ぶと破壊力あると言うか何というか)
碧「ごめん由良、何だっけ?」
由良に視線を戻して碧は話の続きを聞こうと近寄る
由良「あー、えと…何でもないです!私もう行かなくちゃ」
◯由良は咄嗟にそう口に出して曖昧に笑ってみせると準備室の扉を出ていく
碧「あっ、由良」
ちょっと待ってと言わんばかりの声を碧が出すがそれに気づかないふりして小走りで準備室をあとにした
◯大学内・講義室・上側端の席に一人で着席する由良
授業が始まる前の講義室はそれぞれ話したりしている為ガヤガヤしていた。その音を聞きながら由良は考える
由良「さっきの人誰だったんだろう」
由良モノローグ(考えてみれば先生のこと私何にも知らないんだなぁ)
依澄「ねぇ、それって僕のこと?」
綺麗な声とともにポンッと背後から由良は肩を叩かれて驚き控えめだけど声が出る
依澄「ごめんごめん。そんな驚かなくても」
依澄がふわっと笑う顔が少し碧と似ていてドキリとする由良
由良「いや、その」
依澄「僕今日から編入してきたんだ。由良ちゃん、だよね?碧君からちょっと話聞いたことがあるよ。面白い生徒がいるって」
由良モノローグ(面白い生徒って…喜んで良いのかどうなのか)
由良「あ、編入…どうりで初めて見ると思った。よろしくね、羽月由良です」
握手の手をして差し出すと依澄は驚いてそれからすぐに握り返した
依澄「よろしく、相良依澄です」
由良「いずみ、君って言うんだ。綺麗な名前だね」
そう言って由良が笑顔を見せると依澄は照れくさそうにでも少し悲しそうにそうかな、なんて笑う
由良「そういえば先生とはどんな関係なの?」
いつの間にか依澄は由良の隣に腰掛けている
依澄「あぁ、従兄弟なんだよね」
由良「従兄弟?!どうりで…」
"雰囲気が似てるね"
そう思ったけどなぜか言い出せなかった由良
依澄「ん?何か言った?」
由良「ううん!別に、あ…」
教壇に立つ碧を見つけて嬉しそうにする由良

◯講義終わり・昼休みの食堂
依澄「ねぇ、由良ちゃんさぁ…碧君のこと好きでしょう」
食堂の場所が分からないという依澄を案内しつつ一緒に食べることになった
由良「え?!」
依澄「ちょ、声大きすぎ」
口元を押さえて笑いを堪える依澄
由良「ごめん。その好きって言うか…うん、好き」
恥ずかしくなってだんだん語尾が弱まる由良
依澄「んー?何?聞こえないなぁ」
そんな由良の顔を下から覗きこんで揶揄う依澄
由良「ち、近いって!みんな見てるし」
すぐに体を離して由良は自分よりもうんと背の高い依澄を見上げた
依澄「あはは。ごめんね。可愛いなって思って」
由良「はいはい。モテる人は言うことが違うなぁ。というか食堂の場所覚えられた?」
依澄「えー、まだ覚えらんないから由良ちゃんしばらく僕とご飯食べてよ。それに僕モテないし」
由良「えー?どうしようかなぁ」
依澄「ひどいなぁもう、僕困ってるのに」
由良と依澄が笑い合ってると由良の大好きな声が頭上から聞こえた
碧「楽しそうだな。俺も混ぜてよ」
落ち着いた深い優しい声
ゆったりと話すせいで余計にそう聞こえる
由良「先生!何でここに?」
碧「ん?たまたま見かけて」
由良(私を?それとも依澄君を?)
依澄「僕はいいけど。由良ちゃんは?」
由良「私も賛成、です」
碧「そう?ありがと」
◯碧は丸いテーブルの真ん中に座り由良と依澄はその横に座った
碧「そういえばこっち来て一人暮らし?」
パスタを食べながら碧が依澄に問いかける
依澄「うん、そう」
碧「引越しの手伝い呼んでくれれば行ったのに」
依澄「僕荷物少ないから平気」
碧「大変だったら言えよ」
依澄「うん。ありがと」
由良はふたりの会話に置いていかれつつあった
それだけではなく依澄の周辺に女の子達が集まってきてしまいその場から立ち去ろうと依澄と碧に声をかけた
由良「私先に行くね!また」
依澄「もう行くの?じゃあ僕も」
依澄はそう言って席を立とうとする
それを周りのギャラリーが阻んで中々思い通りに行かない
由良「大丈夫、ゆっくりしてきて!」
依澄「ごめんね」
申し訳なさそうに依澄は眉を下げた
由良「全然。先生もまた」
◯中庭・昼休みの続き・外の桜が風に吹かれて少しずつ散り始めている
碧「由良!」
後ろから走ってきた碧に腕を掴まれて振り返る由良
由良「先生?」
碧「悪い依澄と2人で話してて置いてけぼりみたいな感じにしちゃって」
由良(なんだ、そんなこと気にしてくれてたんだ)
由良「いえいえそんな」
碧「それと朝、何か言いかけてたよな?どうした?」
心配そうに眉を下げて碧が聞く
由良「本当に何でも」
碧「嘘じゃんそれ。どうした?言ってみな」
由良「えっ…じゃああの…今度2人で出掛け、たいです」
由良(言った!私は言った)
恥ずかしくて碧の顔が見れずに俯いてしまう由良
由良(先生無言なんですけど…何か言って)
碧「なん、だぁそんなことかぁ」
碧はホッとしたような声を漏らす
それと同時に由良も顔を上げた
由良「な!そんなことって…」
碧「ん?どうした?全然いいよそれくらい」
由良は目が合った碧の綻んだ顔で笑う姿があまりにも良すぎて言葉を失う
そこへ駆け足でやって来る依澄
依澄「こんな所にいたんだ。あの後碧君先に行っちゃうし大変だったんだから」
依澄は可愛らしく頬を膨らませて少し拗ねてみせる
碧「悪い。ちょっとな」
依澄「由良ちゃんも先に行かなくても良かったんだよ?」
由良「ごめん。でも私明らかに場違いだったから」
依澄「そんなことないよ」
由良「え?」
急に真剣な顔で由良を見つめる依澄に戸惑って由良は固まってしまう
碧「依澄、あんま由良の事困らせんな。じゃあ次の授業の準備あるからもう行くな」
碧は由良の頭をポンと撫でて名残惜しそうに手を離すと背を向けた
由良「は、い」
由良(先生、さすがにそれは期待しちゃうよ)
先に行くと言った碧の後ろ姿を見送る
碧の後ろ姿に桜の花びらが風でブワッと舞い上がりひたすら愛おしそうに見つめる由良
◯碧目線・教材準備室
ふぅ、と軽いため息をつく碧
中庭がよく見渡せるようになっている造り
由良と依澄が仲良さそうに話をしている姿を見つける碧
碧「ふっ、仲良過ぎだろあの2人」
碧モノローグ(まさか今朝編入早々依澄が準備室に来るとは思ってなかった。まぁ、ある意味助かったけど)
◯窓から由良を見つめる為に準備をとりやめて窓枠に肘をつく
碧モノローグ(由良が、好きだと思った。可愛い奴だなって思って気づいた時にはもう…。だからほぼ毎日無邪気に準備室に来る由良と一定の距離を保って割と頑張って理性を保っている)
碧モノローグ(それなのに依澄と初対面とは思えない程仲が良さそうに肩を寄せ合っているように見えて凄く嫌だなと思う)
碧「あーあ、何やってんだろ俺」
由良と出かけることを思い出して口元がニヤける
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