愛のち晴れ 海上自衛官の一途愛が雨女を幸せにするまで
* * *
「素敵なプレゼントが見つかって、本当によかったです」
──時刻は、十五時三十分を回ったところ。
あれから私たちは予定どおりにプレゼント探しをしたあと、施設内の海の見えるレストランで少し遅めのランチをした。
外はあいにくの雨だけど、レストランの大きな窓から見える灰色の海は、どこか憂いを帯びているような儚さがあって綺麗だった。
そして今は、預けていたスマホを受け取りに、お店に向かっているところだ。
肝心の重光さんの還暦祝いのプレゼントは、悩んだ甲斐があってとてもいいものを買えたと思う。
「そのワインを渡したら、重光さんはすごく喜んでくれると思います」
今、航さんが下げている紙袋の中には、専門店でソムリエに相談して購入したヴィンテージワインが入っている。
重光さんはワイン好きだから、これならきっと喜んでくれるだろうと意見が合致して航さんが購入した。
「陽花が選んだペアグラスと一緒に渡せば、完璧だな」
彼のワイン選びを見届けたあと、私は同じお店でペアのワイングラスを購入した。
繊細なステムとやわらかな曲線が美しい、薄張りの上品なグラスだ。
目にした瞬間、グラスを傾けてほほ笑み合う重光さんと祥子さんの姿が頭に浮かび、ほぼ即決で購入した。
「重光さんはもちろんですけど、私は祥子さんにもすごくお世話になっているので……。ふたりがいつまでも元気に、このグラスを使ってくれたらいいなと思います」
ほほ笑むと、航さんはまた眩しそうに目を細めてから頷いた。
「プレゼント、できれば時間を合わせてふたりで渡したいよな」
ヴィンテージワインとペアグラス、それぞれが入った紙袋を軽く持ち上げながら、航さんが提案してくれた。
その提案を断る理由はない。
「はい。私は基本的にシーガーデンにいるので、航さんに無理のない日程と時間を教えていただけたら合わせます」
私の返事を聞いた航さんは、「それじゃあ行けそうな日を確認してから、また連絡するよ」と答えた。
また航さんと、会えるかもしれないんだ。
未来の約束に胸を躍らせるなんていつぶりだろう。なんだかとてもくすぐったい気持ちになった私は、自然と笑みをこぼしていた。