愛のち晴れ 海上自衛官の一途愛が雨女を幸せにするまで
【連載を目指して、一緒に頑張ってみませんか?】
そんなDMが届いたときには、さすがに詐欺の案内かと疑ったけれど。
年齢も今年で二十七、今さら夢を追いかけていいものか、ずいぶん悩んだ。
でも、こんなチャンスはもう二度と巡ってこないかもしれない。
そうして蜘蛛の糸を掴むような気持ちで【ぜひよろしくお願いします】と返信したら、実際に出版社に行き担当編集さんと会えることになった。
そのあとは打ち合わせをして、物語の方向性を決め、連載に向けて動きだすことになって今に至る。
きっと、子供の頃の私が聞いたら、泣いて喜ぶような状況だ。
だって小学生の私は、自作の漫画を描いたノートが机の上に積み上がっていたくらい、漫画家に強い憧れを抱いていたから。
でも──結局、中学卒業前にいろいろあって、私は一度、漫画家になるという夢を諦めた。
「……ふぅ」
小さく息を吐いた私は、ふたたびスマホに目を落とした。
【お忙しい中、ご確認いただきありがとうございます。再度、構想を練り直します】
担当編集さんに返信して、もう一度視線を海へと戻す。
SNSではそれなりに人気があっても、やっぱり本職にしようとしたら厳しい世界なのだと、この数カ月で思い知らされた。
もう、何回ボツを言い渡されたかわからない。
ネットにあふれる作家の体験談を読むと、いつの間にか見限られて、気がついたら担当編集さんと連絡がつかなくなっていた──なんてこともあるみたい。
「このままだと私も、そうなるのかなぁ」
思い悩む私とは裏腹に、浜辺では制服姿の高校生カップルが楽しそうにはしゃいでいた。
ああ、いいなぁ。キラキラしてる。
脳裏をよぎるのは、先ほどのメールに書かれていた一文だ。
〝両思いになった主人公たちのやり取りにリアリティがない〟
続いて、以前にもSNSの投稿に似たようなコメントがあったことを思い出した。