愛のち晴れ 海上自衛官の一途愛が雨女を幸せにするまで
 
「航くん、ふたりの関係は否定しなかったわね」

 そっと私に耳打ちしたのは、祥子さんだ。私は自分の顔が熱くなるのを感じながら、グラスを持つ手に力を込めた。
 そこには、あの日、航さんからもらったシルバーのブレスレットが輝いている。
 仕事中は洗い物もするから外していたけれど、パーティーが始まる前につけたのだ。
 つけていたら、航さんが気づいて喜んでくれるんじゃないかって、淡い期待を抱きながら──。

「陽花ちゃん。航くんは、とってもいい男よ。私があと三十歳若ければ、シゲから航くんに乗り換えてるところだもん」

 冗談めかして言った祥子さんは、私の肩を優しく抱き寄せてくれた。
 ふと視線を上げるとやわらかくほほ笑む航さんと目が合って、また胸の奥がキュッと甘く締めつけられた。

「よーし、四人で改めて乾杯しよう!」

 グラスを掲げた重光さんが、店内に声を響かせる。
 ……ああ、どうしよう。私、気づいてしまった。
 私はいつの間にか、こんなにも強く、航さんに惹かれていたんだ。
 気持ちを自覚したら、余計に胸が熱くなった。
 グラスを持つ手が震えている。私はまるでお酒をあおるように、中のジュースを一気に喉の奥に流し込んだ。


* * *


「それじゃあ、おやすみなさい」

 その後パーティーがお開きになり、片づけを終えた私と航さんは、ふたり一緒に店を出た。
 時刻は深夜二十三時半。一時間ほど前から降りだした雨のせいで、空気はしっとり湿っている。

「この雨は陽花のせいじゃなく、予報どおりの雨だから」

 真っ暗な空を見上げ、また雨女のせいか──なんて考えていたことを、航さんには見透かされてしまった。
 小さく笑った彼は隣で傘を広げると、濡れないようにと私の肩を抱き寄せた。

 
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