愛のち晴れ 海上自衛官の一途愛が雨女を幸せにするまで
「……っ」
条件反射で言葉を止めた航さんは、少しだけバツが悪そうに眉根を寄せる。
「す、すみませんっ」
鳴りやまない音。心臓の鼓動が高鳴ったまま、私はあわててスマホを取り出して確認した。
画面には、覚えのない電話番号が表示されている。
こんな時間に迷惑電話だろうか。でも、なぜか無性に胸の奥がざわついて、私はこわばる指で通話ボタンを押した。
「はい、もしもし」
《こちら北南警察署ですが、紫陽花さんの番号でお間違いないでしょうか》
警察?
耳に飛び込んできたその声に、さっきまでの甘やかな空気が一瞬でかき消された。
警察が、こんな時間に、どうして私に電話をかけてくるの?
嫌な予感がして、私は震える唇をそっと開く。
「はい……紫陽花は私です。警察の方が、何かご用でしょうか」
尋ねると、一拍置いて相手が答えた。
《紫さんのお父様が、本日未明、器物損壊の容疑で一時身柄を確保されました》
「え……っ。父、が?」
《はい。それで、できれば紫さんに身元引き受けをお願いできればと思い、お電話をさせていただいたのですが──》
窓を叩く雨音が、よりいっそう強くなる。
いつの間にかフロントガラスは白く曇って景色を消し、私の視界までも曖昧にしていた。