王子姫は旦那様に可愛いと言われたい
「……ところで先輩、まさか……そういう可愛いドレスを着たいんですか?」

 私が裾を手に取っていたのは、ビジューとパールの華やかな装飾を施された、プリンセスラインのドレスだった。

「たしかにドレスは可愛いけど……先輩には可愛すぎるかなぁ」

 可愛すぎる、それは、似合わないの言い換えであることは明白だった。

「……っ」

「てか、先輩、めちゃくちゃ可愛いワンピース着てるじゃないですか。……ぜんっぜん似合ってないけど」

 似合ってない。そのひと言は、私の胸をぐさりと突き刺した。

「無地で飾りがない、地味なドレスのほうが、似合うんじゃないですか?」

「……っ!!」

 ゆまの言葉に、何も言い返せない。

 そんな自分が、みじめで堪らなく恥ずかしい。

(可愛いドレスなんかを夢見て……私、バカみたい)

 スツールからバッグを取り、私はドレスルームを飛び出した。

 ドンッ!!

「っ、姫香?」

「あっ……」

 ドレスルームの扉を開けたタイミングで、私は電話を終えて戻って来た真尋とぶつかってしまった。

「どうしたんだ? ドレス選んでたんだろ?」

「……っ、なんでもない。今日は帰る!」

「なっ……!? おい、待てって!」

 真尋が止めるのも聞かず、私は駆け出した。
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