【マンガシナリオです】クールな彼の無自覚な求愛
お守りの彼
5月
○大学の講義室、昼休憩
玲香「例の彼は見つかった?」
紗矢「まだぁー。学科のオリエンテーションにはいなかったし、この棟で見かけてないから学部が違うのは確かなんだけど。やっぱり、別の大学に行っちゃったのかなぁ…」
玲香「学内にいるとしても、他の学部の可能性が高いね」
紗矢「他の棟も探しに行ってみようかなぁ」
玲香「そもそも、ほんとに顔覚えてるの?一瞬のやりとりだったんでしょ?」
紗矢「そうだけど…あの笑顔を忘れるわけないもん!」
○過去、受験会場
大学受験の日。試験を終え、門を出て帰っている制服姿の紗矢。
紗矢(はぁー緊張したぁ)
悟「落としましたよ」
振り返るとお守りを差し出す制服姿の男子がいた。自分の鞄をパッと見て確認する。付けていたはずのお守りが無かった。
紗矢「あ、ありがとうございます」お辞儀する。
悟「どういたしまして。お互い良い結果になるといいね」
笑顔でそう言われ、ドキッする紗矢。
紗矢(一目惚れだった。名前も学校も知らない彼。あの笑顔がずっとずっと頭から離れなくて、思い出すたびに胸がぎゅーってなる)
○再び講義室
玲香「落としたもの拾ってくれたからって、本当に良い人なわけ?」
紗矢(玲ちゃんは私の男運の悪さを心配している)
「あんな素敵な笑顔の人が、悪い人なわけないから!」
後日
○食堂
玲香「食堂付き合ってもらってごめんねー」
紗矢「ううん。私も食堂で食べてみたかったし」
入り口を入ってすぐに男子2人組とすれ違う。
紗矢(え…今の)
急いで振り返り、横顔を見て確信する。
紗矢(髪色は違うけど、絶対あの人だ!)
食堂を出て行った2人の元へ駆け出す。
紗矢(また会えたら絶対に声をかけるって決めてた。今までの男運の悪さは、この人と出会うためだって信じてた)
「あのっ!」
2人組振り返る。渉に向かって話しかける。
紗矢「私、受験の日にお守り拾ってもらった…」
渉「…え、なんのこと?」真顔。
紗矢「え…」
スタスタとその場を去っていく渉と紗矢を気に掛けつつ後を追う成田。
紗矢(あれれ、思ってた展開と違う…)
その場に固まったままの紗矢の隣に玲香が来た。
玲香「ねぇ、ほんとにあの人なの?」
紗矢「…分かんない」
玲香「笑顔どころか、ずっと無表情のままだったけど。しかも、声小さくて聞きづらかったし」
紗矢(人違いなのかな…)
○外、夕方
門までの帰り道。紗矢、玲香、夢が並んで歩く。
夢「そんなに似てたんだぁ」
紗矢「似てたというか、絶対本人だと思う!思うんだけど…」
玲香「バッサリ切られたもんねぇ」
紗矢(初対面の私に眩しい笑顔見せてくれた人が、あんな塩対応するわけない。せっかく会えたと思ったのに…)
藤野「いっちー!」
後ろから声をかけられる。
紗矢「あ、藤野先輩。お疲れ様です」
藤野「お疲れ。明後日よろしくな!」
紗矢「はい!」
玲香達を見る。
藤野「友達?」
紗矢「高校からの友達と大学で仲良くなった子です」
藤野「そうなんだ。いっちーは抜けてるとこもあるけど、良いやつだからよろしくな!」
そう言い紗矢の頭に手を置く。
藤崎「じゃ、またな」
去っていく。
玲香「あれが噂の藤野先輩か」
夢「噂の?」
玲香「紗矢の中学の先輩。話では何回か聞いたことあったけど、想像より男前だったわ」
紗矢「中学の時からモテモテだったからね」
2日後。
○紗矢の母が営む居酒屋、夜。
テーブルを拭く紗矢。
紗矢(母は小さな居酒屋を営んでおり、私も高校生の頃から可能な日は手伝っている)
大学の最寄駅から一駅で着く場所にある。男子バレーボールサークルのメンバーが店内に入ってくる。
サークルメンバー達「「よろしくお願いしまーす!」」
紗矢の母「いらっしゃい」
3年「一ノ瀬ちゃん久しぶり!」
2年「紗矢ちゃん、今日もよろしくー」
紗矢(3年生の藤野先輩は、何年か前に無くなったバレーボールサークルを1年生の時に復活させた。サークル発足時から母のお店を定期的に利用してくれているため、2、3年生はほぼ顔見知りだ。藤野先輩をはじめ、みんな妹みたいな感覚で可愛がってくれている。今日は1年生の歓迎会で来てくれた)
メンバーの1番後ろに渉の姿が見えた。
紗矢(!?)驚く。
会が始まる。
藤野「バレーボールサークルへようこそ!これからよろしくな!乾杯!!」
メンバーたち「「かんぱーい!」」
会の途中。
紗矢「先輩!ちょっと!」
こっちに来るよう手招きする。
藤野「なんだよ」
紗矢「あの端っこに座ってる人って誰ですか?」
藤野「え、端っこ?」
机を見て確認する。
藤野「あー、確か建築学科の…神崎って言ってた気がする」
紗矢(建築なんだ…神崎…)
藤野「なに、いっちー。気になんの?」
ニヤニヤしながら聞く。
紗矢「いや、そういうわけじゃ…」
ちらっ、淡々と食べている渉を見る。
藤野「ごめん、いっちー。水ある?こいつが酔っちゃったみたいで」
酔ったメンバーを支えながら。
紗矢「あ、分かりました。今、お水用意しますね」
渉(食べ過ぎた。ちょっと外の空気吸おう)
外に出ると「大丈夫ですか?」と酔ったメンバーに寄り添い、介抱する紗矢の姿を見つけた。
渉(そういえば、あの子この前話しかけてきたような…)
会が終わった。
メンバー「ご馳走様でした!」
紗矢の母「こちらこそ毎回ありがとうね!紗矢ももう上がっていいよ」
紗矢「いいよ、明日休みだし」
紗矢の母「いいからいいから。藤野くん、この子送ってもらってもいい?」
藤野「お任せください」
○店の外
藤野「じゃあ、またなー。気をつけて帰れよー」
1、2年生「お疲れ様でーす」
自転車組、徒歩組、電車組、それぞれ分かれて帰りだす。電車組の紗矢たちは駅に向かう。渉もいる。
○電車内
各駅で降りていく。いくつか駅を過ぎ、紗矢と藤野も降りる。紗矢が横を見ると渉も降りていた。
紗矢(あ、同じ駅なんだ)
改札を出た。
渉「俺、こっちなんで。お疲れ様でした」
軽く会釈。
藤野「おぉ、お疲れー」
右方向に進む紗矢と藤野。渉は左方向に歩いて行く。
紗矢(反対方向なんだ)
渉の後ろ姿を見つめる。
週明け。
○中庭
お弁当を食べている紗矢と玲香。
玲香「建築学科で、バレーボールサークルだったんだ」
紗矢(得られた情報はそれだけ。まぁ、お守りの彼じゃないなら知るは必要ないんだけど…)
成田「一ノ瀬ちゃん?」
紗矢「?」
成田と渉が近寄ってきた。
紗矢(噂をすれば!神崎と…)
「あ、えっと…」
成田「覚えてないとかひどいなぁ。成田 玄。バレーボールサークルの」
喋りながら隣に座ってくる。渉は座らず立ったまま。
紗矢は歓迎会のことを思い出す。
紗矢(あ、神崎の隣にいたような…)
成田「先輩たちが色々呼んでたから、勝手に好きに呼んじゃったけど大丈夫?」
紗矢「うん、大丈夫だよ」
成田「よかった。俺のことも好きに呼んで。渉も自己紹介しとけって」
渉「…神崎 渉」
成田は玲香の方を見る。
玲香「木村 玲香です」
成田「2人とも栄養学科?」
玲香「ううん、私は保育学科」
成田「学科違うのに仲良いんだ?」
紗矢「同じ高校なの」
成田「俺たちも同じ高校だよー」
渉を指差す。そして、机の上の弁当を見た成田。
成田「それにしても、彩り鮮やかで美味しそうな弁当だね。一ノ瀬ちゃんの手作り?」
紗矢「うん」
(よく喋る人だなぁ。それに比べて…)
立ったままスマホをいじっている渉を見た。
紗矢(全く会話に入ってこないし、終始無表情なんだけど…)
成田「じゃあ、そろそろ。邪魔してごめんねー」
手を振る成田と軽く会釈する渉。去って行く。
玲香「対照的な2人だったね」
紗矢「ほんとだね」
○大学から駅までの帰り道、夕方
紗矢が1人で歩いている。
紗矢(なんか気分が悪い。今日は店の手伝いもないし、悪化する前に早く帰ろう)
電車に乗った紗矢は立ったまま気分が悪そうな顔。ドアが開き、フラフラしながら降りる。改札を出たところで、ふらっと倒れそうになる。その瞬間後ろから誰かに腕を掴まれる。
紗矢(え…)
意識が朦朧としながら薄目で振り返る。紗矢目線のぼんやりとした渉の姿。
紗矢(え…お守りの…)
○大学の講義室、昼休憩
玲香「例の彼は見つかった?」
紗矢「まだぁー。学科のオリエンテーションにはいなかったし、この棟で見かけてないから学部が違うのは確かなんだけど。やっぱり、別の大学に行っちゃったのかなぁ…」
玲香「学内にいるとしても、他の学部の可能性が高いね」
紗矢「他の棟も探しに行ってみようかなぁ」
玲香「そもそも、ほんとに顔覚えてるの?一瞬のやりとりだったんでしょ?」
紗矢「そうだけど…あの笑顔を忘れるわけないもん!」
○過去、受験会場
大学受験の日。試験を終え、門を出て帰っている制服姿の紗矢。
紗矢(はぁー緊張したぁ)
悟「落としましたよ」
振り返るとお守りを差し出す制服姿の男子がいた。自分の鞄をパッと見て確認する。付けていたはずのお守りが無かった。
紗矢「あ、ありがとうございます」お辞儀する。
悟「どういたしまして。お互い良い結果になるといいね」
笑顔でそう言われ、ドキッする紗矢。
紗矢(一目惚れだった。名前も学校も知らない彼。あの笑顔がずっとずっと頭から離れなくて、思い出すたびに胸がぎゅーってなる)
○再び講義室
玲香「落としたもの拾ってくれたからって、本当に良い人なわけ?」
紗矢(玲ちゃんは私の男運の悪さを心配している)
「あんな素敵な笑顔の人が、悪い人なわけないから!」
後日
○食堂
玲香「食堂付き合ってもらってごめんねー」
紗矢「ううん。私も食堂で食べてみたかったし」
入り口を入ってすぐに男子2人組とすれ違う。
紗矢(え…今の)
急いで振り返り、横顔を見て確信する。
紗矢(髪色は違うけど、絶対あの人だ!)
食堂を出て行った2人の元へ駆け出す。
紗矢(また会えたら絶対に声をかけるって決めてた。今までの男運の悪さは、この人と出会うためだって信じてた)
「あのっ!」
2人組振り返る。渉に向かって話しかける。
紗矢「私、受験の日にお守り拾ってもらった…」
渉「…え、なんのこと?」真顔。
紗矢「え…」
スタスタとその場を去っていく渉と紗矢を気に掛けつつ後を追う成田。
紗矢(あれれ、思ってた展開と違う…)
その場に固まったままの紗矢の隣に玲香が来た。
玲香「ねぇ、ほんとにあの人なの?」
紗矢「…分かんない」
玲香「笑顔どころか、ずっと無表情のままだったけど。しかも、声小さくて聞きづらかったし」
紗矢(人違いなのかな…)
○外、夕方
門までの帰り道。紗矢、玲香、夢が並んで歩く。
夢「そんなに似てたんだぁ」
紗矢「似てたというか、絶対本人だと思う!思うんだけど…」
玲香「バッサリ切られたもんねぇ」
紗矢(初対面の私に眩しい笑顔見せてくれた人が、あんな塩対応するわけない。せっかく会えたと思ったのに…)
藤野「いっちー!」
後ろから声をかけられる。
紗矢「あ、藤野先輩。お疲れ様です」
藤野「お疲れ。明後日よろしくな!」
紗矢「はい!」
玲香達を見る。
藤野「友達?」
紗矢「高校からの友達と大学で仲良くなった子です」
藤野「そうなんだ。いっちーは抜けてるとこもあるけど、良いやつだからよろしくな!」
そう言い紗矢の頭に手を置く。
藤崎「じゃ、またな」
去っていく。
玲香「あれが噂の藤野先輩か」
夢「噂の?」
玲香「紗矢の中学の先輩。話では何回か聞いたことあったけど、想像より男前だったわ」
紗矢「中学の時からモテモテだったからね」
2日後。
○紗矢の母が営む居酒屋、夜。
テーブルを拭く紗矢。
紗矢(母は小さな居酒屋を営んでおり、私も高校生の頃から可能な日は手伝っている)
大学の最寄駅から一駅で着く場所にある。男子バレーボールサークルのメンバーが店内に入ってくる。
サークルメンバー達「「よろしくお願いしまーす!」」
紗矢の母「いらっしゃい」
3年「一ノ瀬ちゃん久しぶり!」
2年「紗矢ちゃん、今日もよろしくー」
紗矢(3年生の藤野先輩は、何年か前に無くなったバレーボールサークルを1年生の時に復活させた。サークル発足時から母のお店を定期的に利用してくれているため、2、3年生はほぼ顔見知りだ。藤野先輩をはじめ、みんな妹みたいな感覚で可愛がってくれている。今日は1年生の歓迎会で来てくれた)
メンバーの1番後ろに渉の姿が見えた。
紗矢(!?)驚く。
会が始まる。
藤野「バレーボールサークルへようこそ!これからよろしくな!乾杯!!」
メンバーたち「「かんぱーい!」」
会の途中。
紗矢「先輩!ちょっと!」
こっちに来るよう手招きする。
藤野「なんだよ」
紗矢「あの端っこに座ってる人って誰ですか?」
藤野「え、端っこ?」
机を見て確認する。
藤野「あー、確か建築学科の…神崎って言ってた気がする」
紗矢(建築なんだ…神崎…)
藤野「なに、いっちー。気になんの?」
ニヤニヤしながら聞く。
紗矢「いや、そういうわけじゃ…」
ちらっ、淡々と食べている渉を見る。
藤野「ごめん、いっちー。水ある?こいつが酔っちゃったみたいで」
酔ったメンバーを支えながら。
紗矢「あ、分かりました。今、お水用意しますね」
渉(食べ過ぎた。ちょっと外の空気吸おう)
外に出ると「大丈夫ですか?」と酔ったメンバーに寄り添い、介抱する紗矢の姿を見つけた。
渉(そういえば、あの子この前話しかけてきたような…)
会が終わった。
メンバー「ご馳走様でした!」
紗矢の母「こちらこそ毎回ありがとうね!紗矢ももう上がっていいよ」
紗矢「いいよ、明日休みだし」
紗矢の母「いいからいいから。藤野くん、この子送ってもらってもいい?」
藤野「お任せください」
○店の外
藤野「じゃあ、またなー。気をつけて帰れよー」
1、2年生「お疲れ様でーす」
自転車組、徒歩組、電車組、それぞれ分かれて帰りだす。電車組の紗矢たちは駅に向かう。渉もいる。
○電車内
各駅で降りていく。いくつか駅を過ぎ、紗矢と藤野も降りる。紗矢が横を見ると渉も降りていた。
紗矢(あ、同じ駅なんだ)
改札を出た。
渉「俺、こっちなんで。お疲れ様でした」
軽く会釈。
藤野「おぉ、お疲れー」
右方向に進む紗矢と藤野。渉は左方向に歩いて行く。
紗矢(反対方向なんだ)
渉の後ろ姿を見つめる。
週明け。
○中庭
お弁当を食べている紗矢と玲香。
玲香「建築学科で、バレーボールサークルだったんだ」
紗矢(得られた情報はそれだけ。まぁ、お守りの彼じゃないなら知るは必要ないんだけど…)
成田「一ノ瀬ちゃん?」
紗矢「?」
成田と渉が近寄ってきた。
紗矢(噂をすれば!神崎と…)
「あ、えっと…」
成田「覚えてないとかひどいなぁ。成田 玄。バレーボールサークルの」
喋りながら隣に座ってくる。渉は座らず立ったまま。
紗矢は歓迎会のことを思い出す。
紗矢(あ、神崎の隣にいたような…)
成田「先輩たちが色々呼んでたから、勝手に好きに呼んじゃったけど大丈夫?」
紗矢「うん、大丈夫だよ」
成田「よかった。俺のことも好きに呼んで。渉も自己紹介しとけって」
渉「…神崎 渉」
成田は玲香の方を見る。
玲香「木村 玲香です」
成田「2人とも栄養学科?」
玲香「ううん、私は保育学科」
成田「学科違うのに仲良いんだ?」
紗矢「同じ高校なの」
成田「俺たちも同じ高校だよー」
渉を指差す。そして、机の上の弁当を見た成田。
成田「それにしても、彩り鮮やかで美味しそうな弁当だね。一ノ瀬ちゃんの手作り?」
紗矢「うん」
(よく喋る人だなぁ。それに比べて…)
立ったままスマホをいじっている渉を見た。
紗矢(全く会話に入ってこないし、終始無表情なんだけど…)
成田「じゃあ、そろそろ。邪魔してごめんねー」
手を振る成田と軽く会釈する渉。去って行く。
玲香「対照的な2人だったね」
紗矢「ほんとだね」
○大学から駅までの帰り道、夕方
紗矢が1人で歩いている。
紗矢(なんか気分が悪い。今日は店の手伝いもないし、悪化する前に早く帰ろう)
電車に乗った紗矢は立ったまま気分が悪そうな顔。ドアが開き、フラフラしながら降りる。改札を出たところで、ふらっと倒れそうになる。その瞬間後ろから誰かに腕を掴まれる。
紗矢(え…)
意識が朦朧としながら薄目で振り返る。紗矢目線のぼんやりとした渉の姿。
紗矢(え…お守りの…)
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