【マンガシナリオです】クールな彼の無自覚な求愛

失恋

○大学、製図室
授業の合間の休憩中
成田「てかさー、藤野先輩って一ノ瀬ちゃんのことめちゃ好きだよねぇ。いくら同中だとしても、特別感ありすぎ」
聞きながら黙々と図面を描く渉。
成田「付き合うのも時間の問題かなぁ」
渉「…。」


週末
○ポップアップ会場
紗矢の好きなキャラクターの期間限定ポップアップイベントにいる紗矢と藤野。
紗矢「推し活に付き合ってくれてありがとうございます」
藤野「こういうの初めて来たわ」
興奮しながらパネルやグッズを見て回る紗矢。
紗矢(これも欲しいなぁー!あ、こっちも…あれ、そういえば先輩は…)
見渡すと隅の方でポツンといる。
紗矢(やばい、推したちに気を取られて先輩のこと放置しすぎた)焦る。
側に行く。
紗矢「ごめんなさい。夢中になりすぎて」
藤野「いやいや。俺のことは気にせず好きなだけ没頭して」
紗矢(そう言われても…)
「あの、もう十分満喫したので大丈夫です!」
藤野「ほんと?」
紗矢「はい」

○中華料理店、夜
紗矢の家の最寄駅近くの店。4人掛けテーブルに向かい合わせに座る紗矢と藤野。
藤野「何食べよっかー」
紗矢「エビチリ食べたいかも」
藤野「いいな、エビチリ。チンジャオロースーも頼もうかな」
メニュー表を見る2人。
成田「あ!」
成田と渉が店に入ってきた。
藤野「おー」
紗矢(神崎…。先輩どうするんだろう、一応デート中だけど)
藤野「店内混んでるし、ここ座るか?いっちーそれでもいい?」
紗矢「もちろんです」
スッと立ち上がった藤野は、神崎たちに
「こっち座って」と言い、紗矢の隣に移動する。
成田「お邪魔しまーす」
(俺たちに席を与えつつ、一ノ瀬ちゃんの1番側は確保する。さすがだな、先輩)

食べている4人。
藤野「この辺の店にいるの珍しいな」
成田「渉の家に遊びに行ってたので」
藤野「そうなんだ」
成田「あ、そういえば同じ学科の女子が、先輩の連絡先知りたがってるんですけど」
藤野「俺、会ったことある子?」
成田「いや、一方的に大学祭で見かけて気になったみたいです」
紗矢(行事じゃないとなかなか他学科の先輩を知る機会ないもんね)
藤野「大学祭での俺といっちーのラブラブっぷりをその子は見てないのかぁ。残念だな、いっちー」
紗矢「ラブラブしてません!」
渉「…。」
藤野「あはは。さすがに話した事ない子と交換するのはなぁ」
成田「わかりました。頑張って話しかけろって伝えときます」

○紗矢の家の前
紗矢「今日はありがとうございました」
藤野「全然。なぁ、テスト終わったら夜景見に行かない?」
紗矢(3回目のデートで夜景。やっぱり先輩って恋愛上級者だなぁ)
紗矢「はい。夜景を楽しみにテスト頑張ります」
人がいないか左右を確認する藤野。
紗矢(?)
ぎゅ、抱きしめる。
藤野「お試しってさ…どこまでいいんだっけ?」抱きしめたまま聞く。
紗矢(どこまで…。手も繋いだし、ハグもした。次は…)
藤野「夜景デートまでに決めといて」
耳元で囁く。紗矢の耳赤くなる。
藤野「じゃあ、また。おやすみ」
紗矢「おやすみなさい」


テスト明け。
○電車のホーム
大学帰りの紗矢。ホームで電車を待つ。
渉「お疲れ」
渉が隣に来た。
紗矢「あ、お疲れ!」
(この時間に電車被るの珍しいな)
電車に乗り込む2人。
車内は人が少ない。横並びに座る。
紗矢「だいぶ寒くなってきたよね。神崎寒いの苦手そう」
渉「うん、苦手。でも夏より冬の方が好きかな」
紗矢「私も夏より冬派!冬ってイベント多いし、食べ物美味しいし、冬服かわいいし…」
渉「あはは、めっちゃ冬好きじゃん」
紗矢(笑われた…けど笑ってくれたの嬉しい)
「寒くなると鍋とか食べたくならない?」
渉「あぁ、なるね。…まだ秋だけど、今度ウチで鍋する?」
紗矢「え?」
渉「今日でもいいけど」
紗矢(え、今、家で一緒にご飯食べようって誘われた!?ええええ!)
渉「忙しいならこん…」
紗矢「ヒマ!!全然行ける!!うん、鍋しよう!」

○スーパー
紗矢(神崎と2人でスーパー。何この同棲カップルみたいな感じ!やばい、にやけそう)
渉「何鍋にする?」
紗矢「豆乳鍋もいいし、寄せ鍋も…神崎が辛いの平気なら豚キムチ鍋もあり!」
渉「豚キムチ…それがいい」
紗矢「よし、決まりね!」
店内で買い物する2人のシーン。

○渉のアパート、夜
紗矢「お邪魔します」
渉「どーぞ」
紗矢(家に来るの倒れかけた日以来)
渉「一緒に作る感じでいい?俺、そんな上手くないから邪魔になるならお任せするけど」
紗矢「一緒に作ろうよ」
髪を結ぶ紗矢。その姿を見る渉。
渉「…髪、伸びたよね」
紗矢「え、あぁ、久々に伸ばそうと思って…」
(…切れないよ。深い意味はなくても、神崎が優しく触れたこの髪を切れるわけない)
図書館で触れたシーン。

手際よく調理する紗矢。隣で野菜を切る渉。
渉「ほんと料理上手だよね。やっぱ料理好きだから栄養学科にしたの?」
紗矢「料理好きなのももちろんあるし、私ね、小中学校の給食が大好きでさ。栄養いっぱいで、美味しい給食を考えて作る立場に私もなりたいなと思ったの」
渉「そうなんだ」
紗矢「神崎は、どうして建築選んだの?」
渉「うーん、家でも商業施設でも学校でも、その空間が人に寄り添って快適なものなら、幸せな時間が過ごせると思うんだよね。優しさ溢れる建物を自分が作れたら最高だろうなって」
紗矢「かっこいい理由だね。…私たち生きる上で大事な【衣食住】の【食】と【住】に向けて頑張ってるんだね!」
微笑む渉。

完成した鍋を食べ始める。
2人「「いただきまーす。ふー、ふー」」冷ます
ぱくっ、もぐもぐ
渉「うまい」
紗矢「おいしー!辛さ加減もばっちり!」
渉「やばい。美味すぎてシメまで残せるか心配になってきた」
紗矢「あはは、それはそれでありだよ」

食べ終わり。結局シメも食べた。
紗矢「はぁーお腹いっぱい」
渉「一ノ瀬の料理食べてみたいと思ってたから、すごい満足」
紗矢「え、そうなの!?鍋って手料理になるのかな」
渉「弁当作ってもらうのハードル高いし」
紗矢(お弁当?家で鍋のほうがハードル高い気もするけど)
渉「藤野先輩には今も弁当作ってるの?」
紗矢「たまーにね。先輩の方が授業少ないし、就活で忙しかったりするから」
渉「そうなんだ」
紗矢(そろそろ洗い物しようかな…)
渉「…藤野先輩のこと好きなの?」紗矢をじっと見る。
紗矢「えっ…」
(どうしよう、なんで答えるのが正解なんだろう。お試しとはいえ付き合ってるのに、違うって言うのは間違っている。だからといって好きだと言うのも違うし…)
渉「まぁ、なんでもいいや」
そう言い、食べ終えた食器をキッチンに持って行く渉。
紗矢(なんでもいい…)
ショックを受ける。


夜景デートの日
○山の上の展望台
山の上から工場地帯の夜景が見える。
紗矢「わぁー!きれーい!!」
藤野「すげー綺麗」
紗矢「え、先輩ここ初めて来たんですか?」
藤野「え?そうだけど」
紗矢「てっきり他の人も連れて来たことあるのかと思ってました」
藤野「あのなぁ、他の子と同じとこ連れてくるわけねーじゃん」拗ねた顔。
紗矢(あ、そういうことまで考えてくれてるんだ)

藤野「それにしても平日だからかな、全然人いねーな」
紗矢「ですね。夜景を貸し切りしてる気分です」
藤野「それ最高じゃん」
嬉しそうに夜景を眺める紗矢を見る藤野。
藤野「なぁ、いっちー」
紗矢「なんですか?」横を向く。
藤野「…決まった?」
顔が近づく、キス寸前。
紗矢(先輩と付き合えば、きっと大切にしてくれて幸せだと思う。そう頭では分かっているのに…)
顔を下に向ける。
紗矢「…ごめんなさい。私やっぱり…」
切ない顔をしたあと、切り替えて笑顔の藤野。
藤野「謝んなくていいって。…これからも今まで通り仲良い先輩後輩でいよ?」
申し訳ない顔で小さく頷く。
紗矢(気持ちに応えられないことが、こんなに苦しいなんて。…それでも自分の気持ちに正直でいたい)
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